こんにちは。「施設長のライフノート」です。

介護の仕事をしていると、「自立支援介護」という言葉を耳にすることがあります。

「できることは自分でやってもらう」

「なるべく歩いてもらう」

「オムツではなくトイレで排泄してもらう」

そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。

もちろん、こうした支援も自立支援介護の一部です。

しかし、私が施設長として大切だと考えているのは、**自立支援介護は、何でも自分でできるようにすることではない**という点です。

介護が必要になっても、その人が望む生活をできる限り続けられるように支援すること。

そのために、本人ができることを活かし、難しい部分を適切にサポートすることが重要です。

今回は、自立支援介護の基本的な考え方と、特養の現場で意識したい水分・食事・排泄・運動の4つの視点について解説します。

## 自立支援介護とは?介護の基本となる考え方

自立支援介護とは、介護が必要な方の残された能力や本人の意思を尊重し、できる限りその人らしい生活を続けられるよう支援する考え方です。

介護保険制度でも、利用者の尊厳を守り、その方が持つ能力に応じて自立した日常生活を営めるよう支援することが基本理念となっています。

例えば、食事をする場面を考えてみます。

自分でスプーンを持ち、食事を口に運べる方がいたとします。

しかし、食べる速度が遅いという理由だけで、職員がすべて食事介助をしてしまったらどうでしょうか。

時間は短縮できるかもしれません。

でも、本人が持っている能力を使う機会を減らしてしまう可能性があります。

反対に、食事を自分で食べることが難しい方に、無理に自力摂取を求めることも適切ではありません。

大切なのは、

**「できること」と「支援が必要なこと」を見極めること。**

そして、本人の希望や体調、安全性を踏まえながら支援することです。

## 自立支援介護で大切な4つの基本ケア

自立支援介護を考えるうえで、よく取り上げられるのが次の4つです。

– 水分
– 食事
– 排泄
– 運動

これらは、日常生活を支える基本的な要素です。

ただし、「水分をたくさん飲めば元気になる」「歩けば身体機能が改善する」という単純な話ではありません。

一人ひとりの病気、身体機能、生活習慣、本人の希望を踏まえて、適切に支援することが必要です。

それぞれ詳しく見ていきます。

## ① 水分|飲水量だけでなく、本人の状態を確認する

高齢者のケアにおいて、水分管理は重要です。

高齢になると、喉の渇きを感じにくくなったり、トイレに行く回数を気にして飲水を控えたりすることがあります。

水分不足は、脱水や便秘、体調不良などにつながる可能性があります。

また、脱水が進むと、意識状態の変化やふらつきが見られる場合もあります。

ただし、水分を多く摂取すればよいというわけではありません。

心不全や腎機能の問題などによって、水分摂取量の調整が必要な方もいます。

そのため、医師や看護師と連携しながら、本人に適した水分管理を行うことが大切です。

### 水分を飲んでもらうために現場でできる工夫

私が介護現場で大切だと感じているのは、単に「水分を飲んでください」と声をかけるのではなく、飲みやすい環境を整えることです。

**1.飲みやすい時間帯を見つける**

起床後や食事の際など、本人が自然に飲みやすい時間帯を確認します。

午前中に飲みやすい方もいれば、午後の方が進む方もいます。

本人の生活リズムに合わせることが重要です。

**2.飲み物の種類を増やす**

お茶だけでは飲水が進まない方もいます。

麦茶、ほうじ茶、コーヒー、牛乳、ジュースなど、本人の嗜好に合わせて選択肢を用意する方法があります。

ただし、糖分やカフェイン、疾患による制限などには注意が必要です。

**3.コップを工夫する**

コップの大きさや重さ、持ち手の形状によって、飲みやすさが変わることがあります。

本人が昔から使い慣れているコップを使用することも、一つの方法です。

**4.飲み込みやすい形態を検討する**

液体ではむせやすい方でも、適切に調整したとろみ付き飲料やゼリー状の水分なら摂取しやすい場合があります。

ただし、ゼリーなら必ず安全というわけではありません。

嚥下機能を確認し、必要に応じて看護師や言語聴覚士などと相談して形態を決めることが大切です。

水分ケアは、単に飲水量を増やすことではありません。

**本人が安全に、無理なく必要な水分を摂取できるよう支援すること**が目的です。

## ② 食事|常食にこだわるより「食べる楽しみ」を守る

皆さんは、高齢になったとき、どのような食事を食べたいでしょうか。

私は、できる限り自分の好きなものを、おいしく食べ続けたいと思っています。

食事は、栄養を摂取するだけの時間ではありません。

毎日の楽しみであり、生活の満足感にもつながるものです。

しかし、年齢を重ねると、噛む力や飲み込む力が低下することがあります。

歯の状態や義歯の不具合、病気の影響などによって、これまでと同じ食事が難しくなる場合もあります。

そこで大切なのが、本人の状態に合わせた食事形態の調整です。

### 常食が必ずしも正解ではない

以前の私は、できる限り常食を食べ続けられることが大切だと考えていました。

もちろん、本人が安全に常食を食べられるのであれば、その能力を維持することは重要です。

ただ、今は「常食を食べること」そのものを目標にするべきではないと考えています。

例えば、むせ込みが多く、誤嚥の危険性が高い方に無理に常食を提供すれば、重大な事故につながる可能性があります。

一方で、必要以上に食事形態を下げてしまうと、食べる楽しみや満足感を損なう場合もあります。

そのため、管理栄養士、看護師、介護職、必要に応じて歯科医師や言語聴覚士などが連携し、本人に合った食事を検討することが重要です。

**大切なのは「常食を食べること」ではなく、「その人らしく、安全に食事を楽しめること」。**

これが食事における自立支援だと思っています。

## ③ 排泄|オムツかトイレかではなく、本人の尊厳を守る

排泄は、日常生活の中でも特にプライバシーや尊厳に関わる部分です。

自分でトイレに行き、排泄する。

多くの方にとって当たり前だったことが、身体機能や認知機能の低下によって難しくなる場合があります。

そのとき、介護職には何ができるでしょうか。

### トイレで排泄できる可能性を考える

例えば、歩行は難しくても、車椅子でトイレまで移動できる方がいます。

立ち上がりに介助が必要でも、便座に座って排泄できる方もいます。

また、尿意を言葉で伝えることが難しくても、生活リズムを把握することで、適切なタイミングでトイレに誘導できる場合があります。

こうした可能性を確認せずに、最初からオムツだけで対応してしまうのは、もったいないと感じます。

一方で、トイレでの排泄を無理に求めることも適切ではありません。

移乗時の転倒リスクが高い方。

身体を動かすことで強い痛みが出る方。

トイレへの移動が大きな負担になる方。

こうした場合は、本人の状態に合わせた排泄方法を検討する必要があります。

### 排泄ケアで確認したいこと

– 尿意や便意の有無
– 排泄の時間帯や生活リズム
– 立ち上がりや移乗の能力
– トイレまでの移動方法
– 本人が希望する排泄方法
– 安全性や身体的な負担

これらを確認し、必要な支援を考えます。

私が大切だと思うのは、**オムツを使わないことを目標にするのではなく、本人にとって尊厳が守られ、負担の少ない排泄方法を選ぶこと**です。

## ④ 運動|歩くことだけが自立支援ではない

身体機能を維持するためには、日常的に身体を動かす機会が大切です。

私自身も、散歩や筋力トレーニングを習慣にしています。

介護施設でも、可能な方には歩行の機会をつくることが重要です。

歩行は、移動能力や筋力、持久力などを維持するための活動の一つです。

しかし、介護施設にはさまざまな身体状態の方が生活しています。

全員が歩けるわけではありません。

だからこそ、歩行だけにこだわらないことも必要です。

### 本人に合った活動を考える

例えば、

– 自分で立ち上がる
– 車椅子を自走する
– 椅子に座って体操する
– 食堂まで移動する
– 洗濯物をたたむ
– テーブルを拭く
– 好きなレクリエーションに参加する

こうした日常生活の動作も、本人の能力を活かす機会になります。

もちろん、病気や身体機能によっては運動に制限が必要な場合もあります。

機能訓練指導員や看護師などと連携しながら、安全に実施できる活動を考えることが大切です。

**自立支援介護は、歩けない方を無理に歩かせることではありません。**

今できる活動を大切にし、本人の生活につなげていくことだと思います。

## 自立支援介護で最も大切なのは「本人の意思」

ここまで、水分・食事・排泄・運動の4つについて説明しました。

ただし、これらを実践する際に忘れてはいけないことがあります。

それは、本人の意思です。

例えば、身体機能の維持につながるからといって、本人が強く拒否している運動を無理に続けさせることは適切ではありません。

食事も同じです。

栄養面だけを考えて本人の好みを無視してしまえば、食べる楽しみが失われてしまうかもしれません。

自立支援介護は、職員が考える「理想の高齢者像」に本人を近づけることではありません。

本人が何を大切にしているのか。

どのような生活を望んでいるのか。

何に困っているのか。

そこを理解することから始まります。

そして、本人が自分の意思を言葉で伝えることが難しい場合もあります。

そのときは、表情や行動、これまでの生活歴、家族からの情報などを参考にしながら、本人の意思をできる限りくみ取ることが大切です。

## 施設長として考える自立支援介護の難しさ

自立支援介護は、考え方としては分かりやすいものです。

しかし、実際の介護現場で実践することは簡単ではありません。

例えば、食事を自分で食べられる方がいたとしても、時間がかかることがあります。

忙しい時間帯には、職員が介助した方が早く終わる場合もあります。

排泄についても、トイレ誘導を増やしたくても、職員配置や業務の流れによって難しい場面があります。

自立支援を大切にしたい。

でも、現場には時間や人員の制約がある。

これは多くの介護施設が抱える課題だと思います。

だからこそ、私は施設長として、現場の職員に「自立支援を頑張ってください」と伝えるだけでは不十分だと考えています。

職員が適切なケアを実践できる業務体制をつくること。

多職種で情報を共有すること。

ケアの目的を職員間で統一すること。

そして、必要に応じてケアの方法を見直すこと。

**自立支援介護は、介護職員個人の努力だけで実現するものではなく、施設全体で取り組むもの**だと思っています。

## 科学的介護(LIFE)と自立支援介護の関係

現在の介護現場では、経験や感覚だけに頼らず、利用者の状態を評価し、ケアの改善につなげることも重視されています。

その一つが、科学的介護情報システム「LIFE」です。

LIFEは、利用者の状態やケアに関する情報を収集し、フィードバックなどを活用して介護の質の向上を目指す仕組みです。

例えば、ADL(日常生活動作)や栄養状態、排泄の状態などを評価し、ケアの見直しにつなげていきます。

ただし、データを提出すること自体が目的ではありません。

重要なのは、集めた情報を現場で活用することです。

「以前より立ち上がりが難しくなっている」

「食事量が減っている」

「排泄方法を見直す必要がある」

こうした変化を多職種で共有し、ケアプランや日々の支援に反映させていくことが大切です。

## まとめ|自立支援介護は「その人らしい生活」を支えること

今回は、自立支援介護について、水分・食事・排泄・運動の4つの視点から解説しました。

改めて整理すると、

**水分:** 本人の状態に合わせ、安全に必要な水分を摂取できるよう支援する。

**食事:** 食事形態だけにこだわらず、食べる楽しみや本人の希望を大切にする。

**排泄:** トイレでの排泄の可能性を考えながら、本人の尊厳と安全を守る。

**運動:** 歩行だけでなく、本人ができる活動を生活の中に取り入れる。

この4つは、日常生活を支える重要な要素です。

しかし、私が最も大切だと思うのは、**「自立支援=何でも自分でやってもらうこと」ではない**という点です。

介護が必要になっても、その人が大切にしてきた生活をできる限り続けられるようにする。

できることは活かし、難しいところは適切に支援する。

そして、本人の意思や尊厳を守る。

これが自立支援介護の基本だと考えています。

施設長として、職員がこうした考え方を共有し、日々のケアに活かせる施設づくりを続けていきたいと思います。