こんにちは。特別養護老人ホームの施設長として働いている**「施設長のライフノート」**です。

介護施設で働いていると、

「お尻に赤みがある」

「かかとの皮膚が赤くなっている」

「褥瘡がなかなか改善しない」

といった場面に遭遇することがあります。

私自身、介護現場で褥瘡ケアに関わり、現在は施設長として褥瘡予防や再発防止の取り組みに関わっています。

以前のこの記事では「褥瘡の治し方」というタイトルで、体位交換や栄養、スキンケアなどについて紹介していました。

ただ、今振り返ると「治し方」という表現は適切ではなかったと思います。

褥瘡は、介護職が自己判断で「治療」するものではありません。

褥瘡が疑われる場合には、医師・看護師などの医療職と連携して創の状態を評価し、そのうえで必要な治療と日常生活上のケアを組み合わせていく必要があります。

一方で、

褥瘡をつくらないこと、悪化させないこと、再発させないことには、日々の介護が非常に重要です。

今回は、介護現場で押さえておきたい褥瘡ケアについて、施設長の立場から整理します。

※この記事は一般的な介護・予防に関する情報です。褥瘡が疑われる場合や、すでに創傷がある場合は、医師・看護師などの専門職へ相談してください。

この記事はこんな方におすすめ

  • 介護施設で褥瘡ケアに関わっている
  • 褥瘡予防について勉強したい
  • 施設内で褥瘡研修を行いたい
  • 家族の介護をしていて床ずれが心配
  • 褥瘡を繰り返さないケアを考えたい

褥瘡とは?

褥瘡(じょくそう)は、一般的に「床ずれ」と呼ばれています。

長時間同じ部位に圧力が加わることで血流が悪くなり、皮膚やその下の組織が障害されて起こります。

ただし、

「長時間寝ている=褥瘡」ではありません。

褥瘡の発生には、

  • 圧迫
  • ずれ
  • 摩擦
  • 尿や便などによる湿潤
  • 低栄養
  • 浮腫
  • 活動性の低下
  • 骨突出
  • 全身状態や疾患

など、さまざまな要因が関係します。

日本褥瘡学会も、自力で体位変換できないことに加え、栄養状態の悪化、皮膚の脆弱化、湿潤、浮腫、摩擦・ずれなどが褥瘡のリスクになると説明しています。

だからこそ褥瘡予防は、

「2時間ごとに体位交換すれば大丈夫」ではなく、その人の状態を総合的に評価すること

が重要です。

褥瘡ができやすい場所

褥瘡は、骨が突出していて圧力が集中しやすい場所に発生しやすくなります。

代表的なのが、

  • 仙骨部
  • かかと
  • 後頭部
  • 肩甲骨周辺
  • 大転子部
  • くるぶし

などです。

どこに褥瘡ができやすいかは姿勢によって変わります。

例えば、仰向けで寝ている時間が長ければ仙骨やかかと、横向きで過ごす時間が長ければ大転子やくるぶしなどに圧が集中しやすくなります。

オムツ交換や入浴、更衣などは、こうした部位を確認する絶好の機会です。

介護職の「いつもと違う」という気づきが、早期発見につながります。

介護現場で押さえたい褥瘡ケア7つのポイント

① 同じ場所に圧をかけ続けない

褥瘡予防の基本の一つが除圧・体圧分散です。

自分で寝返りができない方の場合は、体位変換やポジショニングによって同じ場所に圧が集中し続けないようにします。

日本褥瘡学会では、体位変換は基本的に2時間を超えない範囲としていますが、これは絶対的なルールではありません。

体圧分散マットレスの種類や骨突出の程度などによって異なり、一定の条件では4時間を超えない範囲とする考え方も示されています。

つまり、

「全員2時間ごと」ではなく、その人に必要な体位変換を考える。

ここが重要です。

② 体圧分散マットレスやクッションを適切に使う

体位交換だけでなく、福祉用具の選択も重要です。

例えば、

  • 体圧分散マットレス
  • エアマットレス
  • 車いす用体圧分散クッション
  • ポジショニングクッション

などがあります。

特に自力で体位変換できない方では、状態に応じた体圧分散寝具を使用することが重要です。日本褥瘡学会も、体圧分散寝具によって褥瘡発生率を低下させることが可能としています。

ただし、

「エアマットを入れたから安心」ではありません。

身体機能、骨突出、拘縮、活動性などを評価して選択し、使用後も皮膚状態を確認していきます。

③ 摩擦・ずれを減らす

介護職が特に意識したいポイントです。

例えば、

移乗・ベッド上移動

身体を引きずらないようにし、必要に応じてスライディングシートなどを活用します。

オムツ交換

オムツを無理に引き抜いたり、皮膚を強く擦ったりしないようにします。

ベッドのギャッチアップ

身体がベッド上でずり落ちると、仙骨部などにずれの力が加わります。

姿勢を整え、必要に応じて背抜き・圧抜きを行います。

「圧をなくす」だけでなく、

ずれ・摩擦をできるだけ減らす介助

をチーム全体で統一することが大切です。

④ 皮膚を清潔にし、湿潤から守る

尿や便、汗などで皮膚が長時間湿った状態になると、皮膚のバリア機能が低下し、外からの刺激を受けやすくなります。

特に失禁がある方は注意が必要です。

排泄後は、

  • 強く擦らない
  • 優しく洗浄する
  • 必要に応じて保湿する
  • 皮膚保護剤などを活用する

といったケアを行います。

日本褥瘡学会も、失禁による湿潤への対応として、優しく洗浄し、皮膚保護クリームなどを使用することを推奨しています。

以前の記事では「最低でも1日1回洗浄」と書いていましたが、回数を一律に決めるより、失禁状況や皮膚状態に応じて適切に対応するという書き方の方が実践的です。

⑤ 栄養状態を確認する

褥瘡ケアでは栄養も非常に重要です。

食事摂取量が少ない。

体重が減っている。

低栄養が疑われる。

こうした状態では、褥瘡の発生・治癒に影響する可能性があります。

そのため介護現場では、

「食事を何割食べているか」

だけを見るのではなく、

  • 体重変化
  • 食事摂取量
  • 水分摂取
  • 全身状態
  • 食べにくくなった原因

なども確認します。

低栄養がある場合には、医師・管理栄養士などと連携し、疾患や全身状態を踏まえて必要な栄養量や栄養補助食品などを検討します。

日本褥瘡学会も、褥瘡予防の栄養管理では低栄養の回避・改善を基本とし、必要に応じて高エネルギー・高たんぱく質の補助を検討するとしています。

以前の記事では、

褥瘡治癒には30~35kcal/kg必要

と一律に書いていました。

しかし必要量は体格、疾患、活動量、腎機能などによって異なります。

介護職だけで必要カロリーやプロテイン摂取量を決めないことも大切です。

⑥ 毎日の観察で早期発見する

介護職だからこそできる重要な役割です。

オムツ交換。

入浴。

更衣。

体位交換。

移乗。

こうした日常の介助中に、皮膚を観察します。

特に、

「いつもと違う赤み」

を見逃さないようにします。

日本褥瘡学会では、赤みのある部分を軽く圧迫し、押しても赤みが消えない場合には初期の褥瘡が考えられるとしています。

赤みを見つけたら、

「様子を見よう」

だけで終わらせず、

圧を取り除く → 看護職へ報告 → 状態を共有 → ケアを見直す

という流れにつなげることが重要です。

⑦ 発生したら「なぜできたか」をチームで考える

褥瘡が発生したとき、

「薬を塗っているから大丈夫」

では不十分です。

なぜそこに褥瘡ができたのかを考えます。

例えば、

「夜間に同じ姿勢が長くなっていなかったか」

「マットレスは身体状況に合っていたか」

「車いすの座位姿勢が崩れていなかったか」

「最近、食事量が低下していなかったか」

「失禁が増えていなかったか」

「浮腫や全身状態に変化はなかったか」

などです。

原因を残したままでは、創部だけ治療しても再発する可能性があります。

介護職、看護師、医師、管理栄養士、リハビリ職、ケアマネジャーなど、多職種で原因を評価してケアを修正することが大切です。

褥瘡ができたら介護職だけで「治そう」としない

ここは今回のリライトで一番伝えたいところです。

褥瘡の状態によって、

  • 外用薬
  • ドレッシング材
  • 壊死組織への対応
  • 感染への対応

など、必要な治療は異なります。

日本褥瘡学会でも、創の状態や滲出液の量などによって使用するドレッシング材が異なり、医師・看護師と相談したうえで使用するよう案内しています。

そのため、

介護職の役割は「薬や処置方法を自己判断すること」ではなく、異常を早く発見し、医療職につなぎ、日常生活の中で治癒を妨げる要因を減らすこと

と考えると分かりやすいと思います。

施設全体で取り組むことが重要

褥瘡予防を、

「担当介護士が2時間ごとに体位交換する仕事」

にしてしまうと、うまくいきません。

施設として、

  • 褥瘡リスクを評価する
  • ポジショニング方法を統一する
  • 適切な福祉用具を選択する
  • 食事・栄養状態を確認する
  • 排泄・スキンケアを見直す
  • 皮膚状態を記録する
  • 発生したら原因を分析する
  • 多職種で定期的に評価する

という仕組みをつくる必要があります。

厚生労働省の資料でも、褥瘡予防では皮膚観察、圧迫・ずれの除去、栄養管理、皮膚の清潔などを、多職種や家族とともに考えることが示されています。

施設長になった今は、個々の職員に「しっかり体位交換してください」と伝えるだけでは不十分だと感じます。

適切なケアを職員が継続できる仕組みをつくることも、管理者の仕事です。

まとめ|褥瘡ケアは「治療」だけではなく日常の介護が重要

褥瘡予防・悪化防止で介護現場が意識したいのは、

  1. 圧をかけ続けない
  2. 適切な体圧分散用具を使う
  3. 摩擦・ずれを減らす
  4. 皮膚を湿潤から守る
  5. 栄養状態を確認する
  6. 毎日観察する
  7. 発生原因をチームで考える

この7つです。

褥瘡が発生したときに、

「誰が体位交換を忘れたのか」

だけを探しても、本当の改善にはつながりません。

本人の身体状態、栄養、皮膚、姿勢、福祉用具、排泄、介助方法などを総合的に評価する必要があります。

そして、すでに褥瘡がある場合は、介護職だけで判断せず、医師・看護師などの専門職と連携する。

そのうえで介護職は、日々の生活の中で「治りやすい環境をつくる」「新しい褥瘡をつくらない」ことに力を発揮できます。

褥瘡ケアは一人で行うものではありません。

多職種で原因を考え、ケアを統一し、毎日観察する。

これが、施設で継続して取り組みたい褥瘡ケアの基本だと考えています。

褥瘡マネジメント加算についても確認しておこう

介護施設で褥瘡予防に取り組むうえでは、日々のケアだけでなく、**介護報酬の「褥瘡マネジメント加算」**について理解しておくことも大切です。

褥瘡の発生リスクを評価し、その結果をもとに多職種で計画を作成・実施し、継続的に見直していくことが求められます。

今回紹介した「リスクを評価する」「原因を分析する」「多職種でケアを見直す」といった取り組みは、褥瘡マネジメントを考えるうえでも重要なポイントです。

褥瘡マネジメント加算の算定要件や具体的な進め方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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