こんにちは!施設長のライフノートです。

特別養護老人ホームで働いていると、

「今日はいつもより怒りっぽいな」

「急に落ち着かなくなった」

「何度も立ち上がって歩き回っている」

そんな入居者さんに出会うことがあります。

認知症があると、つい「認知症の症状が進んだのかな?」と考えてしまいがちです。

しかし、ちょっと待ってください。

最後に排便があったのはいつでしょうか?

介護現場で長く働いていると、便秘が続いている時期に落ち着かなくなり、排便後には普段の状態に戻るという方を経験することがあります。

もちろん、便秘そのものが認知症を引き起こすという意味ではありません。

大切なのは、

「認知症があるから仕方ない」と決めつけず、便秘・痛み・脱水・感染症などの身体的不調が隠れていないか確認することです。

今回は、特養での経験を交えながら、高齢者の便秘と認知症ケアについて解説します。

※この記事は介護現場での経験をもとにした一般的な情報です。便秘の治療や薬剤の調整については、医師・看護師・薬剤師などの専門職に相談してください。


この記事はこんな方におすすめ

・認知症の方の便秘対応に悩んでいる介護職
・「最近急に落ち着かなくなった」という入居者を担当している方
・下剤だけに頼らない排便ケアを考えたい方
・高齢者の排便ケアについて勉強したい方


「認知症が悪化した」と決めつけないことが大切

介護現場で特に注意したいのが、

「認知症だからこういう行動をするんだ」

と決めつけてしまうことです。

認知症のある高齢者は、自分の身体の不調をうまく言葉にできないことがあります。

「お腹が張って苦しい」

「便が出そうなのに出ない」

「トイレに行きたい」

こうした不快感を言葉で伝えられず、

・落ち着かない
・何度も立ち上がる
・トイレを探す
・怒りっぽくなる
・食欲が低下する
・夜眠れなくなる

といった行動として現れる可能性があります。

そのため、普段と違う様子が見られたときには、認知症だけを見るのではなく、

「身体に何か起きていないか?」

という視点を持つことが重要です。

高齢者では、便秘だけでなく脱水、感染症、薬剤など様々な要因によって一時的に認知・精神状態が変化することがあります。認知症とせん妄は別の状態であり、急激な変化がある場合には特に注意が必要です。


高齢者はなぜ便秘になりやすい?

高齢者は若い人と比較して便秘になりやすい傾向があります。

原因は一つではありません。

・活動量の低下
・食事量の低下
・水分摂取量の低下
・腹筋などの筋力低下
・排便を我慢する
・トイレまでの移動が大変
・薬の影響
・病気の影響

など、様々な原因が重なって便秘につながります。

厚生労働省も、便秘に関係する要因として水分不足、食事内容、活動量低下、排便を我慢することなどを挙げています。

だからこそ、

「便が出ない=とりあえず下剤」

ではなく、その人がなぜ便秘になっているのかを考えることが重要です。


介護職が確認したい5つのポイント

入居者さんの便秘が続いている場合、私は次のような情報を確認することが大切だと考えています。

①最後に排便したのはいつ?

まず基本となるのが排便記録です。

「何日出ていないか」だけではなく、

・量
・硬さ
・色
・排便した時間
・自然排便か下剤使用後か

なども確認します。

その人自身の普段の排便パターンを知ることが大切です。


②水分はどのくらい摂れている?

水分摂取量が減っていないか確認します。

高齢者は自分から積極的に水分を摂らないこともあります。

また、

「トイレに行きたくないから飲まない」

という方も珍しくありません。

ただし、心不全や腎疾患などによって水分量の管理が必要な方もいます。

単純に「たくさん飲んでもらえばいい」というわけではありません。

医療職と相談しながら、その方に適した水分量を考えます。


③食事量は落ちていない?

食事量が減れば、当然便の材料も減ります。

また、食物繊維などの摂取も便通に関係します。

ただし、食物繊維も「多ければ多いほどいい」というわけではありません。

便秘の状態や疾患によって対応は変わるため、管理栄養士や医療職と相談して調整しましょう。


④活動量が減っていない?

寝たきりや車椅子で過ごす時間が長くなると、活動量が低下します。

可能な方であれば、

・居室からリビングまで歩く
・トイレまで歩く
・食堂まで歩く
・体操をする
・立位練習をする

など、特別な運動ではなく生活の中で身体を動かす機会を増やすことも一つの方法です。

厚生労働省の介護教材でも、便秘への介護として適度な運動などが紹介されています。


⑤薬が変わっていない?

これは非常に重要です。

薬の中には便秘を起こしやすいものがあります。

そのため、

「最近、新しい薬が追加されていないか?」

という視点を持ちましょう。

ただし、介護職の判断で薬を中止してはいけません。

便秘が続く場合には、排便記録や食事・水分量などの情報を整理して、看護師や医師へ相談します。


下剤は「悪い薬」ではない

以前の私は、

「できるだけ下剤を使わず自然排便を目指した方がいい」

という考えが強くありました。

もちろん、生活習慣やケアによって排便できるのであれば、それに越したことはありません。

しかし現在は、

必要な方に適切な下剤を使用することも大切な排便ケア

だと考えています。

慢性便秘症には様々な治療薬があり、その方の便秘の状態によって医師が薬を選択します。

特に刺激性下剤については、現在のガイドラインでも有効性が認められている一方、耐性や習慣性を避けるため必要最小限とし、できるだけ頓用または短期間で使用することが示されています。

つまり、

「下剤=悪」でも「便秘=とりあえず下剤」でもありません。

本人の状態に合わせて適切に使用することが重要です。


介護現場でできる便秘へのアプローチ

薬以外にも、介護現場でできることはたくさんあります。

水分摂取

本人の好みを把握して、

「何なら飲んでくれるのか?」

を探します。

お茶だけにこだわる必要はありません。

本人が好きな飲み物や、飲みやすい温度・コップなどを工夫することも大切です。


食事

食事量や食物繊維の摂取状況を確認します。

介護職だけで判断するのではなく、管理栄養士とも情報共有しましょう。

「最近食事量が落ちている」

という情報自体が重要です。


適度な運動

その人の身体機能に合わせて身体を動かします。

特別な運動をしなくても、

「トイレまで歩く」

ことも立派な運動です。

生活そのものをリハビリとして考える視点が大切だと思います。


排便しやすい環境を作る

意外と見落とされやすいポイントです。

・トイレまで遠すぎないか
・座位姿勢は安定しているか
・足が床についているか
・急かされていないか
・プライバシーは守られているか

なども確認します。

便意があっても安心して排便できる環境でなければ、排便を我慢してしまう可能性があります。


アロマや腹部マッサージはどうする?

以前の記事では、アロマ、ホットパック、腹部マッサージなども積極的に紹介していました。

しかし、現在この記事をリライトするにあたり、私は少し考え方を変えています。

介護現場では、

「以前この方法で出たから、今回もやろう」

という経験則だけでケアを固定してしまわないことが大切です。

腹部の張りや痛み、嘔吐などがある場合には、腸閉塞など別の疾患が隠れている可能性もあります。

特に、

・強い腹痛
・嘔吐
・著しい腹部膨満
・血便
・急激な体調変化
・何日も排便がなく苦しそう

などが見られる場合は、安易にマッサージなどを行わず、まず看護師や医師へ報告・相談しましょう。


「排便記録」と「行動」を一緒に見る

この記事で一番伝えたいのはここです。

単純に、

「今日は便が出た・出なかった」

だけを記録して終わりにしないことです。

例えば、

排便3日なし

落ち着かなくなる

夜間何度も起きる

トイレを何度も探す

排便あり

落ち着いて過ごせる

というパターンが何度も繰り返されているのであれば、非常に重要な情報です。

介護職だからこそ気づける変化だと思います。

排便状況だけでなく、

・水分量
・食事量
・活動量
・睡眠
・服薬
・表情
・行動の変化

などを一緒に記録していくと、その方独自のパターンが見えてくることがあります。


急に様子が変わったら「認知症のせい」にしない

認知症のある方が突然、

「怒りっぽくなった」

「落ち着かなくなった」

「歩き回るようになった」

そんな時には、

「認知症が進行した」

とすぐに判断しないことが大切です。

便秘だけではありません。

痛み、発熱、脱水、感染症、睡眠不足、薬の影響など、身体の中で何かが起きている可能性があります。

認知症のある方の行動は、時として本人からのSOSなのかもしれません。

だからこそ私たち介護職には、行動そのものを止めるのではなく、

「なぜこの行動が起きているんだろう?」

と考える視点が求められます。


まとめ

高齢者、特に認知症のある方にとって排便管理は非常に重要なケアの一つです。

今回のポイントをまとめます。

  1. 便秘そのものが認知症を引き起こすわけではない
  2. 便秘などの身体的不調が行動変化に関係している可能性がある
  3. 急な変化を「認知症だから」で片付けない
  4. 排便・水分・食事・活動・薬などを総合的に見る
  5. 下剤を必要以上に悪者にせず、医療職と連携して適切に使用する
  6. 排便記録と本人の行動変化を一緒に観察する

介護は「便を出すこと」が目的ではありません。

その方が苦痛なく、気持ちよく生活できることが目的です。

排便記録の数字だけを見るのではなく、その人の表情や行動、生活全体を見る。

それが介護職だからこそできる排便ケアではないでしょうか。

本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました!