介護職の賃上げは本当に届いている?2026年の処遇改善加算を施設長が解説
こんにちは。施設長のライフノートです。
介護業界で働いていると、何度も耳にする言葉があります。
「介護職の賃上げ」
国から介護職の処遇改善策が発表されるたびにニュースになりますが、現場で働く人からすると、
「結局、自分の給料はいくら上がるの?」
「ニュースでは賃上げと言っているけど、あまり実感がない」
というのが一番気になるところではないでしょうか。
実は私も、2022年にこのブログで**「介護士賃上げは届いているのか?」**という記事を書きました。
当時話題になっていたのが、介護職員の収入を3%程度、月額9,000円程度引き上げるために始まった「介護職員処遇改善支援補助金」です。
あれから約4年。
私は現在、特別養護老人ホームの施設長という立場になりました。
そして処遇改善制度も大きく変わっています。
そこで今回は、昔の記事をそのまま残すのではなく、
「介護職の賃上げは、その後どうなったのか?」
という視点から、2026年現在の制度と、現場で働く介護職が確認しておきたいポイントを整理します。
※制度については2026年8月時点の厚生労働省公表資料をもとに整理しています。
この記事はこんな方におすすめ
・介護職の給料が今後どうなるのか気になる方
・処遇改善加算の仕組みがよく分からない方
・「国は賃上げと言っているのに実感がない」と感じている方
・介護施設の管理職・リーダー
・これから介護業界で働こうと考えている方
2022年、「月9,000円程度の賃上げ」が話題になった
この記事を最初に書いた2022年、介護業界では大きなニュースがありました。
介護職員の収入を3%程度、月額9,000円程度引き上げるための「介護職員処遇改善支援補助金」です。
当時、私が勤務していた法人でも支給が始まりました。
ただし、私の勤務先では介護職だけでなく他職種にも配分していたため、介護職への支給額は月額6,000円でした。
当時の私は、
「9,000円じゃないの?」
と思ったことを覚えています。
ただ、ここで理解しておかなければならないことがあります。
国が示す「○円程度の賃上げ」と、個々の職員の給与明細にその金額がそのまま上乗せされることは、必ずしも同じではありません。
これは現在の処遇改善制度を理解するうえでも重要なポイントです。
その後、処遇改善制度は大きく変わった
2022年当時は、
・介護職員処遇改善加算
・介護職員等特定処遇改善加算
・介護職員等ベースアップ等支援加算
など、複数の制度が存在していました。
現場の職員からすると、
「結局、何がどう違うの?」
という非常に分かりにくい状態だったと思います。
この制度が2024年6月から整理されました。
従来の3つの加算が一本化され、
「介護職員等処遇改善加算」
になっています。
現在は基本的にこの制度を中心に、介護職員等の賃金改善が行われています。
2026年6月から処遇改善加算がさらに拡充
そして2026年。
介護職員の処遇改善はさらに動いています。
厚生労働省は、2026年6月から処遇改善加算をさらに拡充しています。
背景にあるのは、やはり介護人材の確保です。
介護業界では採用難が続いています。
施設長として採用に関わっている私自身も、人材確保の難しさは日々感じています。
給与だけですべてが解決するわけではありません。
ただ、
「この仕事を続けたいと思える給与水準」
をつくることは、人材確保・定着を考えるうえで非常に重要です。
「月1万円」「最大1.9万円」は、そのまま給料に入るの?
ここは特に誤解されやすいところです。
2026年度の介護報酬改定は**+2.03%**。
政府はこの改定について、介護従事者について月1万円、介護職員については定期昇給込みで月最大1万9,000円の賃上げが可能な水準と説明しています。
ここだけを見ると、
「じゃあ毎月1万9,000円給料が増えるの?」
と思ってしまいます。
しかし、そう単純ではありません。
重要なのは、
「最大1万9,000円が全介護職員へ一律支給される」という制度ではない
ということです。
実際の賃金改善の方法や配分は、取得している加算区分や事業所の賃金体系などによって変わります。
厚生労働省も、介護職員等処遇改善加算について事業所内で柔軟な配分が可能としています。
だからこそ、
「ニュースで1万円と言っていたのに、自分は1万円増えていない」
ということも起こります。
では処遇改善のお金はどこへ行くの?
ここは介護職として知っておいた方がいいところです。
処遇改善加算は、事業所が自由に利益として使っていいお金ではありません。
一定の要件を満たしたうえで、職員の賃金改善につなげる仕組みです。
現在の制度では、単純に手当を支給するだけでなく、
月額賃金の改善、キャリアパス、職場環境改善
などが制度の重要な要素になっています。
つまり、
「処遇改善手当」という名前で給与明細に大きな金額が載っていなくても、
基本給や各種手当などに反映されている可能性があります。
だから、自分の職場が処遇改善をどう給与へ反映しているのか知りたい場合は、給与規程や処遇改善に関する職場の説明を確認することが大切です。
施設長になって感じる「賃上げだけでは足りない」
2022年にこの記事を書いたとき、私はかなり「給料」に注目していました。
もちろん、今でも給与は非常に重要だと思っています。
むしろ採用する側になった現在の方が、その重要性を感じています。
求職者が職場を選ぶとき、
給与。
休日。
通勤。
夜勤回数。
福利厚生。
人間関係。
キャリアアップ。
さまざまな条件を比較します。
その中で給与水準が低ければ、そもそも応募先として選んでもらえない可能性があります。
一方で、施設長になって分かったこともあります。
給料だけ上げれば、人が定着するわけではありません。
本当の「処遇改善」は給料+働きやすさ
処遇改善という言葉を見ると、どうしても「給料を上げる」というイメージが強くなります。
でも現在の処遇改善加算には、職場環境等要件も設けられています。
2025年度からは、職場環境等要件として6区分28項目が示され、有給休暇の取得促進やICT機器の導入など、「働きやすさ」に関する取り組みも含まれています。
これは非常に重要だと思っています。
例えば、
・残業が多い
・休みが取れない
・人間関係が悪い
・業務が特定の職員に集中している
・紙の仕事ばかりで非効率
・教育体制が整っていない
こうした職場で、
「給料を少し上げたから辞めないでね」
と言っても限界があります。
給与を上げる。
同時に仕事の負担を減らす。
休みを取れるようにする。
成長できる環境をつくる。
私はこの両方を進めることが、本当の意味での処遇改善だと思っています。
介護職自身も「自分の給与」を確認してほしい
介護職として働いている方には、一度自分の給与明細をしっかり見てほしいと思います。
確認したいのは、
・基本給はいくらか
・処遇改善に関連する手当はあるか
・資格手当はいくらか
・夜勤手当はいくらか
・昇給制度はどうなっているか
・賞与を含めた年収はいくらか
です。
「月給30万円」と書いてあっても、基本給が高いのか、夜勤手当込みなのかでは意味が違います。
転職するときも同じです。
月給だけではなく、年収と給与の内訳を見る。
これは非常に大切です。
「処遇改善を取っている職場=良い職場」とも限らない
旧記事では、
「加算をしっかり算定している職場なら給料が高い」
「算定していないなら転職を考えてもいい」
というかなり単純な書き方をしていました。
現在は少し考えが変わっています。
もちろん、取得できる加算を適切に取得し、職員へ還元することは重要です。
でも、
処遇改善加算を取得している=働きやすい職場
とは限りません。
給与。
年間休日。
有給取得。
残業。
人員配置。
教育。
人間関係。
管理職の考え方。
キャリアアップ。
こうしたものを総合的に見る必要があります。
介護職の皆さんには、
「処遇改善手当はいくら?」だけで職場を判断しない
という視点を持ってほしいと思います。
2022年から4年。介護職の処遇は良くなったのか?
制度だけを見れば、確実に前へ進んでいます。
2022年に話題になった月額9,000円程度の賃上げ措置から始まり、その後制度が整理され、2024年には3つの加算が一本化。
そして2026年6月からは、さらに処遇改善加算が拡充されました。
ただし、
「制度が充実した」ことと「介護職一人ひとりが給料が上がったと実感できる」ことは別問題です。
ここはこれからも見ていく必要があります。
実際、2026年8月28日に開かれた社会保障審議会の介護給付費分科会でも、2027年度介護報酬改定に向けて**「介護人材の確保に向けた処遇改善等」**が議題となっています。
介護人材の確保と処遇改善は、まだ終わったテーマではありません。
まとめ|介護職の賃上げは「金額」だけを見ない
2022年にこの記事を書いたとき、私は、
「月9,000円と言っていたのに、実際は6,000円だった」
というところに注目していました。
あれから4年。
施設長として給与や採用、職員の働き方を見る立場になって感じるのは、
処遇改善は「毎月いくら増えたか」だけでは判断できない
ということです。
もちろん給与は大切です。
介護という専門性と責任のある仕事に対して、適切な賃金が支払われる必要があります。
同時に、
休めること。
残業が少ないこと。
成長できること。
安心して働けること。
仕事を続けたいと思えること。
こうした環境まで含めて改善していく必要があります。
国が制度を作る。
法人がそれを適切に活用する。
そして管理職が、職員に還元される職場をつくる。
この3つが揃って、初めて現場の介護職に「処遇改善が届いた」と言えるのではないでしょうか。
私自身も施設長として、給与だけでなく「ここで働き続けたい」と思える職場をどうつくるかを考えていきたいと思います。
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

