新人介護職が「思っていた職場と違う」と感じたとき|施設長が早期面談で確認していること
こんにちは。「施設長のライフノート」です。
介護施設に新しい職員が入職すると、管理者として気になることがあります。
「職場に馴染めているだろうか」
「仕事についていけているだろうか」
「指導する職員との関係は大丈夫だろうか」
特に入職直後は、本人が表面上は普通に働いていても、内心では大きな不安を抱えていることがあります。
先日、私が施設長を務める特別養護老人ホームでも、新しく入職した職員から、
「思っていたより忙しい」
「以前の職場とは仕事の進め方が違う」
「業務を覚えていけるか不安がある」
といった声が聞かれました。
さらに気になったのが、指導に入っている職員からも仕事に対する不満や愚痴が多く聞かれていたことです。
これは放置しない方がいい。
そう考え、入職して間もない段階でしたが、本人と面談することにしました。
今回はこの経験から、私が考えた「新人職員の違和感を早い段階で拾うことの大切さ」について書いてみます。
新人職員の「思っていたのと違う」は珍しいことではない
新しい職場に入れば、入職前に想像していた仕事と現実にギャップが生じることがあります。
これは介護職に限った話ではありません。
特に介護施設では、同じ「介護職」でも施設形態によって仕事内容がかなり違います。
特養、有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、老健などでは、利用者の状態も違えば、職員配置や業務の流れも違います。
さらに、同じ特養でも施設によって記録方法、介助方法、役割分担、勤務体制などは異なります。
経験者だからすぐに対応できるとは限りません。
むしろ別の施設で長く働いていたからこそ、
「前の施設ではこうだったのに」
というギャップを強く感じることもあります。
だから私は、新人職員から不満が出たときに、すぐ、
「うちではこれが普通だから」
と片付けない方がいいと思っています。
不満の内容より「なぜそう感じたのか」を見る
例えば新人職員から、
「職員1人で見る人数が多すぎる」
と言われたとします。
その言葉だけを聞けば、
「配置基準上は問題ない」
「他の職員も同じ条件で働いている」
と説明したくなるかもしれません。
もちろん、事実関係を説明することは必要です。
ただ、その前に確認したいことがあります。
なぜ、この職員はそう感じたのか。
介助方法がまだ分からないのか。
業務の優先順位が分からないのか。
利用者の特徴を把握できていないのか。
記録に時間がかかっているのか。
周囲に質問しづらいのか。
それとも、本当に業務配置に改善すべき点があるのか。
同じ「忙しい」という言葉でも、原因によって対応はまったく変わります。
新人から出てきた言葉を否定するのではなく、その言葉の奥にある困りごとを確認することが大切だと感じています。
私が「早めに面談しよう」と思った理由
今回、私が特に気になったのは、新人職員の発言だけではありませんでした。
指導に入っている職員からも、仕事に対する愚痴や不満が多く聞かれていたことです。
新人職員にとって、入職直後に一緒に働く職員の影響は大きいと思います。
まだ施設のことをよく知らない時期に、
「この職場は大変だ」
「ここがおかしい」
「この仕事はきつい」
という話を繰り返し聞けば、それがそのまま「この施設のイメージ」になってしまう可能性があります。
だからといって、職員に「愚痴を言うな」と言えば解決する話でもありません。
既存職員が不満を抱えているのであれば、その不満にも理由があるはずです。
新人職員のフォローと、指導する職員のフォロー。
私は、この両方を見る必要があると考えました。
新人との面談で確認したい5つのこと
今回のような場面で、私はいきなり、
「辞めるつもりはありますか?」
とは聞きません。
まずは、今どのように感じているのかを確認します。
① 実際に働いてみてどう感じているか
まずはシンプルに、
「実際に働いてみてどうですか?」
と聞きます。
大切なのは、こちらが答えを誘導しないことです。
「大変でしょ?」
「慣れれば大丈夫だよ」
と先に言ってしまうと、本人が本当に感じていることを話しにくくなる場合があります。
まずは本人の言葉で話してもらいます。
② 何に一番困っているのか
「忙しいです」だけでは、具体的な対策につながりません。
そこで、
「今、一番大変だと感じることは何ですか?」
と少し掘り下げます。
介助なのか。
記録なのか。
利用者との関わりなのか。
業務の流れなのか。
人間関係なのか。
困っていることを具体化すると、こちらが支援できることも見えてきます。
③ 分からないときに質問できているか
新人教育では、教える内容だけでなく「質問できる環境」も重要だと思っています。
分からないことがあっても、
「忙しそうだから聞けない」
「こんなことを聞いたら怒られそう」
という状態では、本人が一人で抱え込んでしまいます。
「分からないことを聞ける人はいますか?」
「質問しづらいと感じることはありませんか?」
こうした点も確認します。
④ 入職前のイメージと何が違ったのか
「思っていた仕事と違った」
のであれば、何が違ったのかを具体的にします。
業務量なのか。
利用者の介護度なのか。
記録量なのか。
勤務体制なのか。
人間関係なのか。
ここを確認すると、本人の理解不足だけではなく、採用時の説明が十分だったのかという施設側の課題が見えてくることもあります。
新人のミスマッチを、すべて本人の問題にしないことも重要です。
⑤ 施設側にサポートしてほしいことはあるか
最後に、
「施設側で何かサポートできることはありますか?」
と確認します。
すべての要望に応えられるわけではありません。
しかし、本人が何を求めているのかを知らなければ、できる支援もできません。
指導担当を調整する。
業務をもう一度説明する。
覚える順番を整理する。
一定期間フォローを増やす。
短い面談をもう一度設定する。
大きな制度変更をしなくても、できることは意外とあります。
新人の不満を全部受け入れる必要はない
ここは管理者として大切にしたいところです。
新人職員の話を聞くことと、すべての意見を受け入れることは別です。
例えば、
「もっと職員を増やしてほしい」
「記録を減らしてほしい」
「この業務はやりたくない」
と言われても、すぐに実現できるとは限りません。
施設には必要な業務がありますし、守らなければならないルールもあります。
だから、
「それはできません」
で終わらせるのではなく、
なぜその業務が必要なのか。
なぜこの体制になっているのか。
そのうえで改善できる部分はないのか。
ここまで説明することが管理者の役割だと思っています。
本人の気持ちは受け止める。
でも、必要なことはきちんと伝える。
この二つは両立できます。
指導する側の職員にも目を向ける
新人がうまく馴染めないと、
「本人の適応力が低い」
「最近の新人はすぐ不満を言う」
と考えてしまうことがあります。
でも、本当にそれだけでしょうか。
今回の経験で改めて感じたのは、新人本人だけを見るのでは不十分だということです。
教える職員が疲弊していないか。
指導方法が職員によってバラバラになっていないか。
新人の前で職場への不満ばかり話していないか。
質問しやすい雰囲気になっているか。
新人教育は「新人をどう育てるか」だけではありません。
受け入れる側の職場をどう整えるかも、新人教育の一部だと思います。
「愚痴を言うな」だけでは解決しない
もちろん、新人職員の前で既存職員が延々と職場の愚痴を話す状態は、私は良いとは思いません。
入職したばかりの職員にとって、その情報が職場を見る基準になってしまうからです。
ただし、そこで、
「新人の前では愚痴禁止」
とするだけでは根本的な解決になりません。
なぜその職員がそこまで不満を抱えているのか。
業務負担なのか。
人員体制なのか。
人間関係なのか。
管理者への不満なのか。
そこにも目を向ける必要があります。
新人の発言をきっかけに、既存職員や職場そのものの課題が見つかることもあります。
施設長になって感じる「現場に顔を出すこと」の大切さ
今回の件も、現場で職員と話している中で気づいたことでした。
管理者になると、会議、書類、採用、行政対応、収支管理など、デスクで行う仕事が増えていきます。
それでも私は、できるだけ現場に顔を出して職員と話すことを大切にしたいと思っています。
何気ない会話の中に、
「最近ちょっと大変です」
「新人さん、少し困っているみたいです」
「この業務、やりにくいです」
といった小さなサインが出てくるからです。
問題が大きくなってから報告を受けるより、小さいうちに気づいた方が対応できることは多くあります。
現場に顔を出す目的は、職員を監視することではありません。
現場で起きている小さな変化を拾うこと。
これは施設長になってから、以前より強く感じるようになりました。
「退職の申し出がある前に、小さなサインを拾う」
新人職員が突然、
「退職します」
と言ったとき、周囲からは、
「そんなに悩んでいるとは思わなかった」
という言葉が出ることがあります。
でも、本当に突然だったのでしょうか。
その前に、
「思っていた仕事と違う」
「忙しい」
「記録が多い」
「うまくできない」
といった小さなサインが出ていた可能性があります。
もちろん、早く面談すれば必ず退職を防げるわけではありません。
本人にとって、その職場が合わないこともあります。
転職した方が本人にとって良い場合もあります。
それでも、何も確認しないまま退職まで進んでしまうのと、一度きちんと話を聞いたうえで本人が判断するのとでは違います。
だから私は、
「少し気になるな」と思った段階で話す。
これを大切にしたいと思っています。
まとめ|新人の違和感は、職場を見直すきっかけにもなる
新人職員から不満を聞くと、管理する側としては、
「まだ入ったばかりなのに」
と思ってしまうこともあるかもしれません。
でも、新人だからこそ見えることもあります。
長く働いている職員にとって当たり前になっていることが、新しく入った人には不自然に見えることもあります。
もちろん、すべての意見が正しいわけではありません。
だからこそ、
まず聞く。
事実を確認する。
必要なことは説明する。
改善できるところは改善する。
この順番が大切なのだと思います。
そして、新人だけではなく、指導する側の職員にも目を向ける。
新人が定着する職場をつくるには、新人本人だけに「頑張って慣れてもらう」のではなく、受け入れる側の職場づくりも必要です。
今回の出来事を通して、改めてそのことを感じました。
施設長としてすべての問題を自分で解決することはできません。
それでも、現場に顔を出し、職員の話を聞き、小さな違和感をできるだけ早く拾う。
今回も、「少し気になる」と感じた段階で本人と話す時間をつくりました。これが正解だったかは、もう少し時間が経たなければ分かりません。それでも、違和感に気づきながら何もしないより、まず話を聞く。その姿勢はこれからも大切にしたいと思います。
そうした積み重ねが、働きやすい職場づくりにつながっていくのだと思います。

