こんにちは。特別養護老人ホームの施設長として働いている「施設長のライフノート」です。

この記事の元となった文章を書いたのは、私がまだ施設長になる前でした。

当時の私は、

「いつか施設長になりたい」

と思いながら働いていました。

そして、

「施設長って実際に何をしているんだろう?」

「現場からはどう見えているんだろう?」

「自分はどんな施設長になりたいんだろう?」

そんなことを考えて、この記事を書きました。

それから時間が経ち、現在は実際に特別養護老人ホームの施設長として働いています。

施設長になる前に想像していた仕事と、実際にやってみて感じる仕事には、同じ部分もあれば違う部分もありました。

そこで今回は、過去の記事を振り返りながら、実際に施設長になった今考える「良い施設長とはどんな人なのか」について書いてみたいと思います。

この記事はこんな方におすすめ

  • 将来、介護施設の施設長を目指している
  • 主任やリーダーなど管理職を目指している
  • 施設長がどんな仕事をしているのか知りたい
  • 介護施設のマネジメントに興味がある
  • 現在、管理職として悩んでいる

施設長になる前に考えていた「施設長の仕事」

昔の私は、施設長の仕事を大きく、

「経営管理」と「職員管理」

の2つだと考えていました。

これは今でも間違ってはいないと思います。

ただ、実際に施設長になってみると、それだけでは足りませんでした。

今の私なら、施設長の役割を大きく5つに分けます。

  1. 施設経営を安定させる
  2. 職員が働ける組織をつくる
  3. 利用者の生活と安全を守る
  4. 問題が起きたときに判断する
  5. 自分がいなくても回る組織をつくる

順番に考えていきます。

施設長の仕事内容をもっと詳しく知りたい方へ

この記事では「良い施設長とは何か」という視点から、施設長として大切だと感じている役割を紹介しています。

一方で、実際の施設長が日々どんな仕事をしているのか、大変なことは何か、どんなところにやりがいを感じるのかについては、別の記事で詳しくまとめています。

私自身、実際に施設長になってみて、なる前に想像していた仕事との違いも多く感じました。

これから施設長を目指している方や、施設長の仕事を具体的に知りたい方はこちらも参考にしてください。

👉 【関連記事】特養施設長になって8か月|実際にやって分かった仕事内容・大変なこと・やりがい

実際に施設長になって分かった5つの役割

① 施設経営を安定させる

施設長になって改めて感じるのが、介護施設も安定した経営ができなければ継続できないということです。

社会福祉法人だから利益を考えなくていい、ということではありません。

施設を維持し、職員に給与を支払い、必要な設備を整え、利用者に継続してサービスを提供するためには、安定した運営が必要です。

特別養護老人ホームの運営では、

  • 稼働状況
  • 入退院
  • 入退居
  • ショートステイの利用状況
  • 各種加算
  • 人件費
  • 残業
  • 採用コスト
  • 修繕費
  • 光熱費などの経費

など、さまざまな数字を確認します。

昔の私は、

「できるだけ稼働率を上げればいい」

という感覚が強かったと思います。

しかし、実際はもっと複雑です。

例えば、入院を減らしたいからといって、必要な受診や入院を避けるわけにはいきません。

介護度についても、収益のために高くするものではありません。

利用者の状態が変化したときに適切な認定につながるよう、必要に応じてケアマネジャーなどと連携して対応します。

加算についても同じです。

「取れる加算をとにかく取る」ではなく、

必要なケアや体制を整え、その結果として適切な加算を算定する。

今はこの考え方の方が大切だと思っています。

数字を見ることは施設長の重要な仕事です。

ただし、数字のために介護をするのではなく、良い介護を継続できる経営状態をつくるために数字を見る。

施設長になった今は、そう考えています。

② 職員が働ける組織をつくる

施設長になる前の記事でも「職員管理」を挙げていました。

実際に施設長になってみても、これは非常に大きな仕事です。

介護施設では多くの人が働いています。

介護職だけではありません。

看護師、ケアマネジャー、生活相談員、機能訓練職、管理栄養士、事務職など、多職種が協力して施設を運営しています。

当然、人が集まれば意見の違いも生まれます。

人間関係の問題、業務への不満、配置への不満、上司と部下の関係、部署間の認識の違い。

施設長にはさまざまな話が入ってきます。

ただ、施設長がすべての問題に直接介入すればいいわけでもありません。

ここは、施設長になってから考え方が変わった部分です。

施設長がすべて解決する組織ではなく、主任やリーダーがそれぞれの立場で判断できる組織をつくる。

その方が組織として強くなります。

施設長の仕事は「問題を全部処理すること」ではなく、問題を解決できる組織をつくることなのだと思います。

③ 利用者の生活と安全を守る

施設長になる前は、施設長というと「経営」や「職員管理」のイメージが強くありました。

実際になってみると、それと同じくらい重いのが利用者の安全に対する責任です。

介護施設では日々、

  • 転倒
  • 誤薬
  • 誤嚥
  • 急変
  • 感染症
  • 身体拘束
  • 虐待防止
  • 苦情
  • 災害

など、さまざまなリスクがあります。

重大な事故や問題が起きれば、

「何が起きたのか」

「なぜ起きたのか」

「今どう対応するのか」

「家族へどう説明するのか」

「行政等への報告が必要か」

「再発をどう防ぐのか」

といったことを整理しなければなりません。

ここには、マニュアルだけでは答えが出ない問題もあります。

そして最終的には、専門職や法人とも連携しながら、施設長として判断を求められる場面があります。

施設長という仕事の重さを最も感じるのは、こうした場面かもしれません。

④ 問題が起きたときに「判断する」

施設長になる前は、

「施設長は何でも知っていて、正しい答えを持っている人」

というイメージが少なからずありました。

実際は違いました。

施設長でも分からないことはあります。

むしろ、判断に迷うことの連続です。

人事、事故対応、家族対応、職員配置、採用、設備、行政対応……。

しかも、

「もう少し情報が集まってから考えよう」

では間に合わないこともあります。

そのときに必要なのは、何でも知っていることではなく、

  • 必要な情報を集める
  • 専門職の意見を聞く
  • 法人や行政に確認する
  • リスクを整理する
  • 優先順位を決める
  • 最終的に判断する

という力です。

そして、判断した結果について責任を持つ。

これは施設長になる前には、十分に想像できていなかった仕事でした。

⑤ 「自分がいなくても回る施設」をつくる

最近、施設長として特に重要だと感じていることがあります。

それが、

自分がいなくても施設が回る状態をつくることです。

施設長が細かいことまですべて把握し、すべて判断する。

一見すると優秀な施設長に見えるかもしれません。

しかし、その人が休んだ瞬間に何も決まらなくなるのであれば、強い組織とは言えません。

主任、リーダー、各専門職が、

「これは自分たちで判断できる」

「これは施設長に報告する」

「これはすぐに相談しなければならない」

と判断できる状態をつくる必要があります。

そのためには、仕事を任せるだけでは足りません。

権限と責任を渡し、失敗したときには一緒に振り返り、次の判断につなげていく。

施設長自身が仕事を抱え込まないことも、マネジメントの一つだと思っています。

では「良い施設長」とはどんな人なのか?

昔の記事では、最後にこう書いていました。

高稼働、介護度も高い、加算も算定できる施設を作り、働いてくれている職員に還元できる施設を作っていきたい。

今読むと、当時の自分がかなり「数字」を意識していたことが分かります。

もちろん、稼働率や収支は今でも重要です。

ただ、実際に施設長になった今なら、少し違う言葉を使います。

私が目指したいのは、

「利用者が安心して生活でき、職員が安心して働け、それを継続できる経営状態にある施設」

です。

利用者だけを見てもいけない。

職員だけを見てもいけない。

数字だけを見てもいけない。

この3つを同時に考えるのが施設長の仕事なのだと思います。

施設長は「縁の下の力持ち」なのか?

昔の私は、

「施設長の仕事は縁の下の力持ち」

と書いていました。

これは今でも半分は合っていると思います。

施設長自身が介護現場の中心に立つわけではありません。

日々利用者を支えているのは、現場で働く職員です。

だからこそ施設長は、その職員たちが働きやすい環境をつくる必要があります。

ただし、今は「縁の下の力持ち」だけでは足りないとも思っています。

問題が起きたとき。

施設として方向性を決めるとき。

難しい判断が必要なとき。

そういう場面では、施設長が前に出なければなりません。

普段は現場を支え、必要なときには前に出る。

そのバランスが重要なのだと思います。

数年前の自分に伝えたいこと

この記事を書いた当時の私は、

「施設長の仕事って楽しいのかな?」

「本当に目指して大丈夫なのかな?」

と書いていました。

実際に施設長になった今なら、こう答えます。

簡単な仕事ではありません。

判断に迷うこともありますし、自分の判断が施設全体に影響するプレッシャーもあります。

それでも、自分の判断や仕組みづくりによって、

職員が働きやすくなったり、

現場の問題が改善したり、

施設全体が少しずつ良い方向へ進んだりする。

そこには、現場とはまた違ったやりがいがあります。

そして、施設長になったから完成するわけでもありません。

今でも、

「自分は良い施設長なのだろうか」

と考えることがあります。

おそらく、この問いに完全な答えが出ることはないのでしょう。

だからこそ、学び続ける必要があるのだと思います。

まとめ|良い施設長は「自分が頑張る人」だけではない

施設長になる前は、

「立派な施設長になりたい」

と思っていました。

今は「立派」という言葉より、

「施設を少しずつ良くできる施設長でありたい」

と思っています。

経営を見る。

職員を見る。

利用者を見る。

問題が起きたら判断する。

そして、自分がいなくても回る組織をつくる。

施設長一人が頑張って施設を良くすることはできません。

良い施設長とは、自分自身が何でもできる人ではなく、周囲の人たちが力を発揮できる環境をつくれる人なのかもしれません。

数年前、「いつか施設長になりたい」と書いていた自分が、実際に施設長になってこの記事を書き直している。

そう考えると、少し不思議な気持ちになります。

これからも試行錯誤しながら、自分なりの施設長像をつくっていきたいと思います。