介護施設で利用者が亡くなったときの対応|家族への連絡・声かけ・職員の動きを施設長が解説
こんにちは。「施設長のライフノート」です。
現在、特別養護老人ホームの施設長として働きながら、介護現場や施設運営、仕事を通して学んだことを発信しています。
介護施設で働いていると、避けて通ることができないのが利用者さんとの最期のお別れです。
特に初めて看取りを経験する職員は、
「利用者さんが亡くなったら、まず何をすればいい?」
「ご家族には誰が、どのタイミングで連絡する?」
「亡くなった利用者さんの家族には、どんな言葉をかければいい?」
「お見送りまで職員はどう動けばいい?」
と不安になることも多いのではないでしょうか。
私自身、長く介護現場で働き、現在は特養の施設長として看取りやご家族への対応に関わっています。
そこで今回は、介護施設で利用者さんが亡くなったときの基本的な対応を「職員の動き」「家族への連絡」「家族への声かけ」という視点から、現場経験を交えて解説します。
※実際の対応は、施設の看取り指針やマニュアル、医師・看護職からの指示、本人・ご家族との事前の取り決め等によって異なります。本記事は一般的な考え方として参考にしてください。
この記事を読んでほしい人
・初めて看取りに関わる介護職員
・利用者さんが亡くなったときの対応に不安がある方
・ご家族への連絡や声かけに悩んでいる方
・施設の看取り体制を整えたいリーダー・管理職
介護施設で利用者が亡くなったときの基本的な流れ
まず、利用者さんの状態が急変してからお見送りまでの大まかな流れを確認しておきましょう。
施設によって異なりますが、おおむね次のような流れになります。
- 利用者さんの状態を確認する
- 看護職等へ報告する
- 医師への連絡・死亡確認につなげる
- ご家族へ連絡する
- エンゼルケアを行う
- ご家族を迎える
- ご家族とのお別れの時間をつくる
- お見送りを行う
- 記録・申し送り・必要な報告を行う
- 職員間で振り返りを行う
ただし、ここで重要なのが、
「看取り対応中の方」と「予期しない急変・心肺停止」では対応が異なる
ということです。
看取りの方針が決まっていない方に心肺停止等が起きた場合には、施設の緊急時対応に従い、救命処置や救急要請が必要になることがあります。
反対に、看取りについて本人・ご家族・医師等で方針が共有されている場合には、その方針に沿って対応します。
その場にいる職員だけで判断せず、事前に決められた施設の手順に従うことが基本です。
①利用者さんの状態を確認する
利用者さんの様子がおかしいことに気づいたら、まず状態を確認します。
・呼びかけへの反応
・呼吸の状態
・意識状態
・顔色
・その他、普段との違い
などを確認し、速やかに看護職等へ報告します。
ここで注意したいのが、
介護職員が「亡くなった」と判断しないことです。
呼吸が確認できない、反応がないといった場合でも、介護職員だけで死亡を判断するものではありません。
看護職や医師等へ連絡し、施設の手順に従って対応します。
また、
「この方は看取りだから」
「高齢だから」
という理由だけで、職員が独断で対応を決めてはいけません。
本人・ご家族の意向、医師からの指示、施設内で共有されている方針を確認することが重要です。
②看護職・医師へ連絡する
状態変化を確認したら、施設のルールに従って看護職等へ報告します。
夜間に看護職が常駐していない施設であれば、オンコールで対応しているところもあるでしょう。
その後、必要に応じて医師へ連絡し、死亡確認等につなげていきます。
このとき介護職員に求められるのは、正確な情報を伝えることです。
例えば、
・最後に状態を確認した時間
・そのときの様子
・状態変化を発見した時間
・発見時の状態
・直前の食事や水分摂取状況
・排泄状況
・普段と違った様子の有無
などです。
「さっきまで大丈夫でした」
だけでは、十分な情報とはいえません。
いつ・どこで・どのような状態だったのか
を客観的に伝えられるようにしましょう。
③ご家族へ連絡する
看取りにおいて、ご家族への連絡は非常に重要です。
そして私が特に大切だと思っているのは、
亡くなってから初めて連絡するのではなく、状態が変化している段階から情報を共有すること
です。
例えば、
「昨日より呼びかけへの反応が少なくなっています」
「食事や水分がほとんど取れなくなっています」
「血圧が低下してきています」
「医師からも最期が近づいている可能性について説明を受けています」
など、状態に応じてお伝えしていきます。
最期に立ち会いたいと思っていたご家族が、施設からの連絡が遅れたことで間に合わなかったとなれば、大きな後悔につながる可能性があります。
そのため、看取りが始まった段階から、
・主に誰へ連絡するのか
・夜間でも連絡してよいのか
・どのような状態になったら連絡するのか
・最期に立ち会いたいのか
・すぐに来設できるのか
などを確認しておくことが大切です。
④電話でご家族にどう伝える?
ご家族への電話は、経験を重ねても緊張するものです。
特に利用者さんが亡くなられたことを伝える場面では、
「何と言えばいいんだろう……」
と迷う職員も多いと思います。
大切なのは、曖昧にしすぎず、落ち着いて事実を伝えることです。
医師による死亡確認後であれば、例えば、
「○○様ですが、本日○時○分、医師によりご逝去が確認されました。心よりお悔やみ申し上げます」
など、状況を落ち着いてお伝えします。
ただし、死亡確認前後の家族連絡を誰が行うのか、どのような表現を使用するのかは施設によって異なります。
介護職員が独断で連絡するのではなく、施設内で連絡方法をあらかじめ決めておくことが重要です。
⑤亡くなった利用者さんの家族にかける言葉
ここが最も悩むところではないでしょうか。
私も以前は、
「何か気の利いたことを言わなければいけない」
と思っていました。
しかし、実際に多くのご家族と関わってきて感じるのは、特別な言葉を無理に探す必要はないということです。
例えば、
「心よりお悔やみ申し上げます」
「○○様には私たち職員も本当にお世話になりました」
「最期までご一緒させていただき、ありがとうございました」
といった言葉でも十分だと思います。
そして、長く関わった利用者さんであれば、その方との具体的な思い出を伝えるのも一つです。
「いつも職員に『ありがとう』と言ってくださる方でした」
「○○がお好きで、召し上がるといつも笑顔になられていました」
「職員にもよく声をかけてくださいました」
こうした言葉には、その利用者さんを「一人の人」として大切にしてきたことが表れます。
形式的なお悔やみだけでなく、その人らしいエピソードを伝えることが、ご家族にとって大切な思い出になることもあります。
⑥無理に励まさない
ご家族が泣いている姿を見ると、何か言葉をかけなければと思ってしまいます。
しかし、
「元気を出してください」
「大往生でしたね」
「天国で見守ってくれていますよ」
などの言葉が、必ずしもご家族の慰めになるとは限りません。
亡くなった直後のご家族には、
「もっと会いに来ればよかった」
「もっと何かできたのではないか」
という後悔や、
「なぜ亡くなってしまったのか」
という怒りなど、さまざまな感情があるかもしれません。
職員が無理に前向きにさせる必要はありません。
ご家族が話しているのであれば話を聞く。
泣いているのであれば静かにそばにいる。
言葉が見つからないのであれば、
「おつらいですよね」
と寄り添うだけでもいいと思います。
看取りの場面では、
「何を言うか」より「どのように寄り添うか」
の方が大切なこともあります。
⑦エンゼルケアを行う
死亡確認後は、施設の方針やご家族の希望に沿ってエンゼルケアを行います。
身体をきれいにしたり、着替えや整容を行ったりします。
このとき大切なのは、
亡くなられた後も、一人の人として丁寧に接することです。
「亡くなったから処置をする」
のではありません。
長い時間を一緒に過ごしてきた利用者さんに対する最後のケアです。
「今までありがとうございました」
という気持ちを持って接することが大切だと私は考えています。
また、ご家族が希望される場合には、可能な範囲で一緒にケアに参加していただくこともあります。
一緒に身体を拭く。
好きだった洋服を選んでもらう。
髪を整えていただく。
こうした時間そのものが、ご家族にとって大切なお別れになることがあります。
⑧ご家族を迎える前に居室を整える
意外と忘れやすいのが、居室の環境です。
ご家族が来られる前に、
・居室を整理する
・不要な物品を片付ける
・ベッド周辺を整える
・照明を調整する
・必要に応じて椅子を準備する
など、ゆっくりお別れができる環境を整えます。
ご家族にとっては、その部屋で大切な人と過ごす最後の時間になるかもしれません。
職員が慌ただしく出入りするのではなく、できるだけ落ち着いて過ごせる環境をつくりたいところです。
⑨他の利用者さんへの配慮も必要
特養などの入所施設では、同じユニットやフロアで何年も一緒に生活している利用者さんもいます。
当然、
「○○さんはどうしたの?」
と聞かれることもあります。
しかし、亡くなられたことをどのように伝えるかについては、本人の尊厳やご家族の意向、周囲の利用者さんの状態等への配慮が必要です。
職員によって説明内容が違うと混乱につながるため、
他の利用者さんへの説明についても職員間で共有しておく
ことが大切です。
⑩最後のお見送りをする
葬儀会社等がお迎えに来られたら、利用者さんのお見送りを行います。
可能であれば、その方に関わった職員も一緒にお見送りできると良いと思います。
特養では、何年も生活される方もいらっしゃいます。
施設は単に介護サービスを受ける場所ではなく、その方にとっての生活の場です。
そこで働く職員も、その方の人生の一部に関わらせていただいた存在です。
業務の都合上、すべての職員がお見送りすることは難しいかもしれません。
それでも可能な職員で、
「ありがとうございました」
という気持ちを込めて送り出したいものです。
⑪対応した内容を記録する
お見送りが終わったら、記録を残します。
例えば、
・状態変化を確認した時間
・発見時の状況
・確認した状態やバイタルサイン等
・看護職等へ報告した時間
・医師への連絡や指示内容
・ご家族への連絡時間と内容
・ご家族の来設時間
・医師による死亡確認
・エンゼルケアの内容
・ご家族とのやり取り
・お見送りまでの経過
など、施設で必要とされる事項を記録します。
特に重要なのは、
「事実」と「職員の推測」を混ぜないことです。
後から記録を確認した人が、
「何時に何が起きて、誰がどのように対応したのか」
を追える記録にしましょう。
⑫看取りが終わったら職員間で振り返る
私は施設長として、看取りが終わった後の振り返りも大切だと考えています。
例えば、
「ご本人が望んでいた最期を支援できただろうか」
「ご家族への連絡のタイミングは適切だったか」
「職員間で情報共有できていたか」
「もっとできたことはなかったか」
などを多職種で振り返ります。
これは誰かのミスを探すためではありません。
次の看取りをより良くするための振り返りです。
そして改善点だけでなく、良かったことも共有します。
「最期に好きな音楽を流すことができた」
「ご家族が間に合い、一緒に過ごすことができた」
「お気に入りだった洋服でお見送りできた」
こうした実践を施設内に積み重ねていくことが、看取りケアの質を高めていくことにつながります。
良い看取りは「亡くなった瞬間」だけではつくれない
介護職員として看取りに関わっていると、どうしても、
「亡くなったらどう対応すればいい?」
というところに意識が向きます。
しかし、施設長として看取りに関わるようになり、改めて感じていることがあります。
それは、
良い看取りは、亡くなった瞬間だけではつくれない
ということです。
本人はどのような最期を望んでいるのか。
ご家族は何を望んでいるのか。
食べられなくなったらどうするのか。
状態が急変した場合はどうするのか。
ご家族は最期に立ち会いたいのか。
こうしたことを事前に話し合い、状態の変化に応じて何度も確認していく必要があります。
日頃のケア。
本人とのコミュニケーション。
ご家族との関係づくり。
医師・看護職・介護職・ケアマネ等の情報共有。
その積み重ねの先に、最期の時間があります。
だからこそ、看取りは「亡くなる直前だけのケア」ではないと私は考えています。
介護職員だって悲しんでいい
もう一つ、介護職員にも伝えたいことがあります。
長年関わった利用者さんが亡くなれば、職員だって悲しくなります。
毎日のように食事介助をした。
トイレに一緒に行った。
昔の話をたくさん聞いた。
一緒に笑った。
時には怒られた。
そんな方とのお別れです。
「仕事なんだから感情を出してはいけない」
と考える必要はないと思っています。
もちろん、ご家族を差し置いて職員が取り乱してしまうのは適切ではありません。
しかし、
「寂しいですね」
「本当に素敵な方でしたね」
と職員同士で思い出を話したり、静かに悲しんだりすることは自然なことです。
人と人が関わる仕事だからこそ、別れがつらい。
それだけ真剣に、その方の生活や人生に関わってきたということでもあると思います。
まとめ|最期まで「その人らしさ」を支える
今回は、介護施設で利用者さんが亡くなったときの対応について解説しました。
ポイントをまとめます。
・利用者さんの状態変化を確認したら速やかに報告する
・介護職員だけで死亡を判断しない
・看取りと予期しない急変では対応が異なる
・状態が悪化している段階からご家族と情報共有する
・ご家族への連絡は落ち着いて事実を伝える
・家族への声かけは、無理に気の利いたことを言わなくていい
・亡くなった後も一人の人として尊厳を持ってケアする
・ご家族がゆっくりお別れできる環境を整える
・対応内容を客観的に記録する
・看取り後は多職種で振り返る
・介護職員自身の悲しみも大切にする
介護施設は、利用者さんの日々の生活を支える場所であると同時に、人生の最期を支える場所でもあります。
利用者さんが亡くなった際には、手順に沿って対応することはもちろん重要です。
しかし、それ以上に忘れたくないのが、
「最期まで一人の人として大切にすること」
です。
そして、ご家族にとって、
「この施設で過ごせてよかった」
「最期まで大切にしてもらえた」
と思っていただけるような関わりができれば、それは介護施設として、とても大切なことではないでしょうか。
正解が一つではないからこそ、本人やご家族の思いを聞きながら、その方らしい最期を支えていきたいと思います。
この記事が、初めて看取りに関わる介護職員さんや、ご家族への対応に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

