ノロウイルス集団感染を経験して
今回、当施設でノロウイルスの集団感染(クラスター)を経験しました。
感染者は利用者・職員を含め40名を超え、複数フロアに拡大。
「感染症はマニュアル通りには止まらない」という現実を、管理者として痛感しました。
この記事は、反省文ではなく、現場で実際に何が起きたのか、何が有効で何が足りなかったのかを共有するための記録です。
同じ立場の管理者の方にとって、少しでも判断材料になればと思います。
① 初動対応で最も重要だったこと
振り返って最も大きなポイントは、
「初期対応」がとにかく重要
ということでした。
最初の数名の嘔吐・下痢症状の時点では、
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胃腸炎かもしれない
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一時的な体調不良かもしれない
と判断を迷います。
しかしノロは疑った時点でノロ扱いしないと負けます。
結果論ですが、
✅ 初期段階でフロア閉鎖
✅ 職員動線の固定
✅ トイレ共有の即時制限
ここまで踏み込む判断が、あと半日早ければ被害は確実に小さかったと思います。
感染症対応は「やりすぎ」がちょうどいい。
これは今回の最大の教訓です。
② 感染拡大の本当の原因
ノロの拡大は「誰かのミス」ではありません。
実際に起きていたのは、
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人手不足で介助を優先せざるを得ない
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嘔吐処理後に別利用者対応へ直行
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トイレ消毒の徹底が理想通りに回らない
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疲労で判断力が落ちる
という、現場の限界でした。
マニュアルは正しい。
でも人間は疲れる。
ここを前提に仕組みを作らないと、感染症対策は机上の空論になります。
今回気づいたのは、
「現場に余裕を作ること」が最大の感染対策
だということです。
③ 管理者の役割は“消毒”ではなく“交通整理”
クラスター中、管理者はつい現場に入りたくなります。
実際、私もトイレ消毒や食事介助等を手伝いました。
でも後から振り返ると、
管理者の本当の仕事は
👉 現場で動くことではなく
👉 全体を整理すること
でした。
具体的には:
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フロア間の人員調整
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情報の一本化
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家族対応
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行政・本部報告
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職員のメンタルケア
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優先順位の決定
現場が混乱すると、感染は止まりません。
指揮系統が静かであることが最大の安定剤でした。
④ 「感染症=医療問題」ではない
今回強く感じたのは、
感染症は医療だけの話ではないということ。
これは、
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組織運営
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職員教育
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コミュニケーション
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文化
の問題でもあります。
例えば:
✔ 嘔吐報告がすぐ上がる職場か
✔ 「大丈夫だろう」と隠さない文化か
✔ 忙しくても手袋交換を徹底できる空気か
これらは技術ではなく組織風土です。
感染症は、その施設の本当の体力を映します。
⑤ 一番つらかったのは職員だった
利用者の体調ももちろん心配でしたが、
現場で一番消耗していたのは職員です。
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自分も感染する不安
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家族へ持ち帰る恐怖
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終わりが見えない勤務
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精神的な緊張
それでも誰も投げ出さなかった。
この経験で、私は改めて思いました。
施設は建物ではなく、人でできている
感染対策の本質は、
「職員を守ること」でもあります。
守られた職員は、利用者を守れる。
これは絶対に忘れてはいけない視点だと思います。
⑥ 次に同じことが起きたらどうするか
今回の経験から、次回に備えて決めたことがあります。
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疑った時点で“最大警戒”
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フロア単位で即封鎖判断
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管理者は現場ではなく指揮に専念
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消毒要員を専属で作る
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職員休憩と交代を強制的に確保
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情報共有を1系統にまとめる
感染症は必ずまた来ます。
「もう起きない」は幻想です。
だからこそ、
次はもっと静かに戦える
状態を作ることが、今回の意味だと思っています。
終わりに
クラスターは施設にとって大きな試練です。
でも同時に、
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組織の弱点
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現場の強さ
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管理者の役割
をはっきり見せてくれます。
今回の出来事を“事故”で終わらせるのではなく、
“財産”に変えられるかどうか。
それが管理者の仕事だと感じました。
もしこの記事が、どこかの施設で
「初動を半日早めるきっかけ」になったなら、
この経験は意味のあるものになると思います。

